ひとりあそび

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ひとりあそび

 先週風邪をひいてドタキャンしたバイトに、久々に顔を出す。飲食にしては派手な髪色。何か言われやしないかと内心ドキドキしていたけれど、上司は皆触れてこなかった。優しいというよりか、辞めてほしくない。その一心がしみじみと浮き出ていた。  チェーンの飲食のバイトは始め二か月くらいは覚えることもたくさんあって面白かったけど、三か月目に突入してきた今、繰り返し作業に飽きてきてしまった。 「何か楽しいことないかなぁ」 声に出してみるけど、誰も振り返ってはくれない。赤いハンチング帽に白のシャツ、ユニクロのパンツに黒の腰巻エプロン。ただの店員が呟いた一言なんて、中に漂い消えていく運命だ。  注文をとって、料理をだす。会計対応をして、下膳をする。机を拭いて、調味料の補充に目を配る。空いた時間で、洗い物。キッチンはこのところ鼻の奥を刺激するような酸っぱい臭いがする。できるだけ近づきたくないのが正直なところ。だけど、暇を持て余すほど時間を無駄にしたくはない。お金をもらうのなら、それ相応の働きをしたい。     
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