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理解しているけれど、やはりキツい。
すっかりやさぐれてしまった自分に、自身も少しうんざりして、ショゲてしまった心を無理矢理奮い立たせるように涙の滲んだ目をぐいっと擦る。
師匠のことは忘れないし、恩を忘れた訳じゃあ、無い。
この世界で再び一人になってしまった今……正直、まだ、ショックで頭が真っ白だ。涙がまだ滲むほどに。
よく考えてみれば、見習いとは言え、成人した人間を一人養うなんて、もしかしたら金銭的にも結構な負担だったのかもしれない。
ひょっとしたら雑用をしたくらいでは見合わないほど、迷惑をかけていたのかも知れない。自分が気づかなかっただけで、彼はこの世界に慣れて来た自分に独り立ちの機会をくれたつもりだった……と、思う。
「…………」
(……やっぱり、あれは欲に目が眩んだ時の顔だったような気もするけど、もしかしたら……ってこともあるし……)
そこまで考えたら、少し頭が冷えて来た。
(いつか、冷静に考えられる日が来たら――その時は……きちんと彼と向き合って話をしたいな……)
「……ベルンシュタインでは、上手くやろう。与えられた仕事を、ちゃんと!」
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