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しかし、美月にとって唯一の居場所を失ってしまった現在、再び天涯孤独となってしまった自分には依然として大きな問題が一つ残ってしまった。
食い扶持を稼ぐ手段が無いことだ。
これは結構差し迫った問題でもある。このままでは野垂れ死ぬのを待つしか無い。
この世界で日々の糧を得るために、この世界で生き残るためにベルンシュタインとやらに向かうしか無いのだろう。
……とは言ったものの、ベルンシュタインはこの王都からは遠く、歩いて行くなら一日近くはかかるだろう。
(……とにかく、生き残る手段探さなきゃ。食い扶持と生きていける場所……見つけなきゃいけないし……どんな場所でどんな人の依頼かもわからないけど……ベルンシュタインには、行きたい)
トボトボと途方に暮れながら重い足取りを引きずり、ベルンシュタイン方面へと向かう馬車を探す。
「失礼。そこの方……もしや、ミヅキ殿でございますか?」
その時、背後から声を掛けられた。のろのろと振り向くと、そこには立派な身なりの騎士が一人、馬を返しながらこちらを見ていた。
「? そうですが」
「おお。やはり! この国では珍しい黒髪のご婦人と聞き及んでおりましたので!」
騎士は馬から降りると、こちらへ近づいて来る。大きな男だ。美月も女性にしては背が高い方だが、彼は美月よりも背が高く、身体も大きい。
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