3.ついに出会いました。

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 中世のヨーロッパのような街、王様の居る国、見たことも無い文字。その見たことも無い文字を最初から読むことが出来たのには驚いた。書くことこそ、こちらでの学習記憶が無いので書けない様子だが、読んだり話したりは頭の中に自動翻訳機があるみたいに、全く違和感無く出来るのだ。  異世界に召喚されるなんて、漫画や小説、アニメの中だけだと思っていたから、私はただただ狼狽えて、脅えて、中々口を開くことさえ出来なかった。それを、ヘリオスは言葉が解るならそれで良いと、あの工房に連れて帰り、衣食住を提供する代わりに出来ることを手伝えと言われたのが、お師匠との出会いだ。  お師匠に弟子(だったのかどうか分からないが)として付いていた時間は短い。彼の技法と自分の技法は全く違うから、良い所やこの世界の技法を学べたことは良かった。それは、本当に幸運だったとも言える。 (だって、私の一番大事な『絵を描くこと』を辞めずに済んだんだもの)  もしかしたら、画家なんて職業の人に、そもそも出会う機会すら無い選択肢だってあったかもしれない。それなのに、偶然でもヘリオスに出会い、好きなことを続けられたから、いきなりこんな世界に来ちゃっても絶望せずにいられたのだと、私は思っている。だから、思う所はあるけれどお師匠には感謝している。  本当は分かっている。 (お師匠は私を『保護』してくれただけ。それでも、飢えずに夜露を凌げていたのは彼のおかげだ。血の繋がりもない私を、保護してくれた)     
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