3.ついに出会いました。

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 芸術家と言うのは不思議なもので、絵を描いている瞬間には自分の肌を露出しようと、一向に恥ずかしいなどと思わない。人にもよるのだろうが、美月がそうだ。表現としての露出ならば、それは自分の描きたいモチーフであって、それ以上の意味は無い。しかし、作品の意図を全く知らない者が見ればどう思うのか――ましてや、あれは美月にとって未完成品だ。未完成品を完成品として見られるのは、描いた者にとっては納得のいっていないものを世に出すようなもので、結構な羞恥を伴う。 「んー! んむぅーー……!」  ハッ! と、自分のしていることに気づいた美月が、レオンハルトの口を塞ぐ手を離すと、彼は慌てて息をする。 「ご、ごごごごごめんなさいっ!」  ケホケホとむせる彼の背中を摩りながら、平謝りしていると、何故かレオンハルトの肩が震えだす。怒っているのかと、その顔を恐る恐る覗くと……彼は何故か心底おかしそうに笑っていた。 「……くッ……ふふふふ……はははっ!」  すごく、可愛らしい表情だった。  少年らしい表情で笑う彼を見つめる美月の目にも、それはきちんと可愛らしく映っていた。  
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