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「……、……」
ぼそぼそと途切れ途切れに聞こえる声は、恐らくレオンハルトの声だ。
紙を一旦置き、窓から声がした方を覗いてみると、やはり声の主はレオンハルトだった。
「……今日も朝早いのね」
絵を描き始めて暫く経つが、彼はいつも朝は陽が昇る前から王宮へと出仕していく。そして、帰宅してから彼の執務室で彼は更に何らかの仕事をしながら、美月はデッサンをしながら、ぽつりぽつりと会話をするようにはなった。しかし、彼は普段あまり表情が無く、あまり感情を表に出さない。良く言えば冷静、悪く言えば何を考えているのか分からない人……と、言うのが美月の彼に対しての印象である。
(初めて会った時は可愛いく笑ってくれたのになぁ……)
朝日が昇り始めたばかりで、庭木の隙間に覗く光が眩しくて、目を細めながら窓を開け、外へ身を乗り出す。朝の冷たい空気が頬を撫でるが、それもどこか心地良い。
「行ってらっしゃい!」
馬車へと乗り込もうとするレオンハルトと目が合って、思わずそう声をかけると、レオンハルトは驚いた表情で美月を見て、少し固まった。
(あれ? 私、何かおかしなことしたかしら?)
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