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「……ですから、このデータの算出方法をここに具体的に示して下さい。そうしたら、僕も許可を出せます」
「恐ろしく機嫌がいいな……宰相補佐官殿?」
レオンハルトに書類を渡された男が扉を出て行くのと入れ違いで、そう言って彼の執務室にノックもせずに入って来た男の声に、再び別の書類に目を通していたレオンハルトが顔を上げる。山積みにされた紙の束越しに、黒髪に濃紺の軍服とマントを着込んだ男が、入口に立ってこちらを見ているのが見えた。
「……これはこれは、王太子殿下。このような所に、多忙な中わざわざご足労頂けるとは。どのようなご用件でしょうか?」
書きかけの書類とペンを置き、立ち上がって仰々しく礼をとる男に、王太子は微かに眉を上げた。
「お前は、相変わらず皮肉たっぷりだな。いいだろ……たまには。幼馴染なんだから」
「……幼馴染……ただの腐れ縁でしょう?」
「ま。そうとも言うか。……それよりも、興味深い噂を聞いたから、わざわざ見に来てやったんだ。いつもなら仏頂面で部下に淡々と説教をするのがお前だろう? どうしたんだ?」
「? 何のことです?」
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