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「――なんでもありません。アル、そろそろ執務に戻りたいのですが」
「お? おう。大丈夫か?」
「……ええ。お陰様で有意義な意見を聞くことが出来ましたし、殿下もお仕事がまだまだ沢山お有りでしょう? そろそろお戻りになられては?」
皮肉交じりに言われて王太子でありながら、宰相補佐官の執務室を追い出されたアルフレッドは、自分よりも五つ程年下のレオンハルトの様子を思い出しながら、頭を掻いた。
「……レオンもまだ青いな」
だが、堅物鉄面皮の氷の次期宰相候補。女嫌いのレオンハルトを落とした女……と言うのは興味深い。今まで女の噂がなかったレオンハルトが、初めて好きになる女とは、一体どのような女なのだろう?
「その女が見てみたいなぁ……今度、あいつの邸にでも押しかけるか……」
ニヤリと笑った王太子は、頭をガシガシとおよそ王子らしく無い仕草で掻き溜め息を吐くと、若き宰相候補殿の執務室を後にした。
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