6.構図はどれにしましょうか?

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6.構図はどれにしましょうか?

 最近、レオンハルトの様子がおかしい。  いつものように、美月は帰宅した彼の執務室でデッサンをしていた。  パネルもレオンハルトが居ない日中にせっせと使用人から大工道具を借りて作成し、先日熱心に選んだ紙も滲み止めのドーサを引いておいたので、後はそれをパネルに水張りするだけで、日本画の製作用パネルは出来上がる。  ドーサと言うのは膠水に明礬(みょうばん)を少し入れた滲み止めに使う液体だ。膠はトートバッグの中から、明礬はこの世界でも染色や皮の(なめ)しに使うから、すぐに見つかってくれて随分安心した。  画材集めを一から自力でやっても、これだけのものをこの世界で全て揃えるには、恐らくかなりの時間と金を使わねばならなかっただろう。美月一人の力であったなら、到底それを成し得る事は出来なかっただろう。  彼は、どうしてここまでしてくれるんだろう?  レオンハルトには感謝をしてもしきれない。  後は、ここまでくれば、下絵を墨で骨描きして色を乗せていくだけだ。     
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