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ざわり、と背中に奇妙な感覚が走る。決して嫌な意味のものでは無い、つるりと背筋を撫でられたかのような、そんな甘い感覚に身体が震えた。
「君は、恋人がいるのか?」
「…………は?」
唐突に、余りにも想定外の質問をされて咄嗟にその質問の意味を汲み取れず、間抜けな声をあげてしまう美月に、気を悪くした様子も無くレオンハルトは至極真面目な表情で、彼女の返答を待っている。
「……い、居ませんけど?」
(な、ななななな何でそんなこと……今、ここで聞くの?)
美月は中学生の頃から美術部で活動し、高校は美術学科へ進み、大学に入学してからも、当然ながら美術一本で生きて来た。同級生は恋をして、絵も描いて、上手く両立していたが、美月は恋愛には元々あまり興味を持たない性質だ。彼氏からの電話を嬉しそうに取る同級生の女子を、遠くから静かに煩わしそうだなぁ……だとか、泊まりに来る彼氏の話を聞きながら、めんどくさそう……だとか、そんな風に冷めた目で見ていた。
その自分に恋人などいる訳が無い。
まぁ、レオンハルトがそれを知る由も無いのだが。
「……そうか」
「? はい……?」
レオンハルトは何かを考えるように、またこちらを見る。
(な、何なんですか……これは?)
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