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7.下絵を描きますよ。
「…………」
ぼんのう。ぼんのうってどんな字書くんだっけ?
ぼんのう……煩悩……あ、これだ!
何だか危うい雰囲気を漂わせた執務室を出て、自分に与えられた部屋にふらふらと戻りながら、美月は今尚、妙な具合に騒ぐ胸を押さえた。別に仏教徒でも何でもないが、自信を持って言える。
今の自分は、煩悩まみれだ。
ハスキーなレオンハルトの声が、妙に耳に残っているし、彼の細い指が触れた場所が熱い。
「いや、おかしいって……」
あれは揶揄われただけだ。
私に興味があるのかと尋ねれば『ある』と答え、私の身体に触れてみたいと、彼は言った。
それは異性に対しての興味であって、私自身への興味ではないのではないかと思うのだ。
(だって、おかしいもの。私は……)
自分の身体を見下ろし、美月は溜め息を吐いた。
レオンハルトが用意してくれた自分の滞在する部屋のクローゼットには、着替えとしてドレスも数十着は用意してくれていた。だが、絵を描くのにはドレスの裾は長過ぎて、ひらひらの袖は筆を握るのには向かない無くて、美月には邪魔でしかない。
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