8.下塗り始めました。

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 人を好きだと感じることは、これまでも何度かあったが、彼女ほど天真爛漫な自由な人をレオンハルトは見た事がなかった。その自由さを好ましく思っていたのだが、それが恋愛感情だと気づいたのは、アルフレッドに指摘されてからのことだ。  美月は不思議な女性だ。  近頃では、女性の働く権利も与えられるようになったこの国であっても、まだまだ珍しい女性の画家。しかも、見たことの無い変わった絵を描く。  実際に『客人(マレビト)』本人と会ったのは彼も初めてだったが、美月のような異世界からの来訪者は、この世界でもごく稀に報告されている。  それら『客人(マレビト)』と呼ばれる異世界からの来訪者の存在は、レオンハルトも聞いた事はあった。彼らの存在は、その異端さから国を挙げての警戒保護対象とされる為、彼らを保護した場合はすぐに国へ報告することが義務付けられている。  レオンハルトは画家であるヘリオスから既に報告を受けていたのだが、とある旅商から(ヘリオス)が保護した女性が持っていたと言うあの姿絵を見せられた時、レオンハルトは何故か無性に……その絵の中の女性のことが気になり始め、次第に、実在するのならば会ってみたいとさえ思うようになっていた。     
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