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9.描けなくなりました(色んな意味で)
「……またまたー、ご冗談を。私は駆け出しの画家です。どこかの令嬢ではありませんし、ダンスも踊れませんから」
美月は暫く驚いて固まっていたが、きっとまた悪い冗談だと思い、笑ってそう答えた。
「……そうか」
少し寂しそうに呟いたレオンハルトに、美月は首を傾げる。
「どうして私にそのような話を? レオンハルト様ならお相手にはお困りにならないでしょう?」
「君となら、参加してみても良いと思った」
普通の舞踏会や晩餐会とは違い、夜会とは言っても王宮の舞踏会となれば規模が大きい。貴族の令嬢として育った訳でも無い美月が、マナーさえ知らぬまま舞踏会に参加など出来ようはずも無い。
「レオンハルト様は、夜会の類いが苦手だと聞き及びましたが、今回は参加されるのですね……」
「……王宮主催のものは、逃げようが無いんですよ。国王陛下がお出ましになるのに、僕が欠席するのはおかしいでしょう?」
「あ、そっか。貴族って大変なんだ……」
美月には舞踏会と言うものが、どんなものなのか想像がつかない。正直、現代日本の……しかも、ただの大学生でしか無い自分には、煌びやかな社交界と言うものがどんなものなのかピンと来ない。
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