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あちらの世界ではお伽話や物語に出て来るようなもの……ぐらいの認識しか無いが、実際にこの国では今尚存在しているし、それが貴族達の重要な交流の場であるのも確かだ。
次期宰相候補と言うからには、恐らくそれなりに職務上の貴族同士の付き合いも沢山あるし、出席したらしたできっと大変なのだろう。
「そうなると、やはり私では力不足ですから」
美月はレオンハルトに困ったように笑みを浮かべ、丁重に断りを入れた。
「……前から思っていたが、君は……どうしてそんなに自己評価が低い? 君は『客人』ですよ? この世界のダンスもすぐには踊れなくて当然だし、身分も君には関係無い。僕は、ただ君と一緒になら楽しい時間を過ごせると思って誘ったのに」
「……レオンハルト様にはもっとその身分に相応しい方がおられますよ。私は、貴方に仕事を頼まれているただのひよっこ画家です。貴方の隣りに立つのなら、年も見た目も相応の方で無くては」
深く考えずに、口から滑り落ちた言葉だった。
年下の男性に対して、身分はまだしも自分の努力ではどうにもならない「年齢」を引き合いに出して、自分の価値観を押し付けて拒絶すること。
――それが、いかに相手の心を抉るのか、恋愛経験の少ない美月には、想像することが出来なかった。
「そう……君まで、そんな風に言うのか」
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