10.君が喚ぶから。

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 大学を卒業後、大学院に進んですぐ、同じく日本画を専攻する彼とは言葉を交わすようになった。美月も控え目な容姿だが、彼もあまり目立つタイプの人間では無い。ただ、美月とは同じ日本画を専攻していて、考え方や学び方に共通点があるので、よく話をする。  美月にとって、そこまで親しい間柄とは言えず、友人とまではいかないので、良く話をする同級生の一人という認識だ。美月と同じ日本画専攻をしている同い年の女性の友人も何人か居るので、それは度々のことでは無いが、時折制作時間や帰宅する時間が重なると、こうしてたまに彼から話しかけて来る。  名古屋まで一緒に出かけるとなると車或いはバスを使うか、新幹線を使うかすることになるだろう。  どちらにせよ、かなりの時間を二人きりで過ごすことになる。 「……考えておくね」  彼の自分に対する様子がこの所、少し変わって来ていることに、美月は気付いていた。 「……それってさ、やっぱ俺と二人きりは無理ってこと? 遠回しに断わってる?」  来た。     
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