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11.嘘を吐いてはいけません。
「――――ッ!!」
ぼすん、と鈍い音がして、自分の身体がどこかへ落下した感触があった。しかし、思ったより痛く無い。それが何故だろうかと考える前に、落ちた自分の身体の上に、黒い影が近づいて、更に何かが降って来たことに気付く。
「……ッ!!」
ぶつかる!! と、美月が身を固くするも、いつまで経っても落ちて来た物体によって、やって来るはずの痛みや衝撃は無かった。
その代わり、バンッとボールでも受け止めたような音がした。
美月は自分が必死に腕に抱えている絵から恐る恐る顔を上げ、音がした方へ目を向けると、「誰か」の腕がにょきりと作品パネルの後ろに見える。自分の腕では無い。
美月の腕は、彼女と一緒に落ちて来たパネルをしっかり精一杯守るように抱き締めている。では、この音のしたものは……と、考えを巡らせてやっと気づいた。
(……画材の入った私のバッグ!!)
ここへ来る前、自分がせっせと詰めた画材の山の存在を思い出した。
小さな小瓶に詰まった岩絵具は、割れないようにタオルに包んでバッグに突っ込んだが、美月と同じように落ちて来たのなら、今の音からすると幾つかは割れているかもしれない。
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