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4.準備は万全に。
「僕の肖像画を描いて欲しい」
ベルンシュタイン公の若きご子息レオンハルトが、そんな風に口を開いた。
「私に、ですか?」
「その為に呼んだのだ」
この世界は、元いた世界で言うと中世以降のヨーロッパみたいだ。
これから発明されたり、カメラに似たものが出て来る可能性はあるが、今現在この国には「写真」と言うものが無い。その代わりに自分の存在を子孫や後世に遺す為にか、貴族や王族、権力者達は画家に肖像画を描かせる。それは珍しいことでは無い。
何より、報酬もたんまりと支払うので、彼を描いて欲しいと言われたら、そりゃあ――
「喜んで!!」
どこかの居酒屋の店員のように元気に、しかも良い笑顔で、美月はレオンハルトに答えた。
そりゃもう、貧乏な上に衣食住も失った今の私には渡りに船ですよ。
え?
警戒感? ……そんなものは、今の私の腹の足しにもなりませんよ。ぺっぺっですよ。
ヘリオスに話を聞いた時は色々と不安を感じたが、自分にはもう失うものは無い。それに、この少年は嘘をつくような人間には見えない。
(それに、ベルンシュタインでは与えられた仕事をきちんとやる! って、決めたんだ)
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