5.どれを使うか迷います。

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5.どれを使うか迷います。

  翌日、いつもより早くに目覚めた美月は、急いで口を濯ぎ、いつものように男物の服に着替え、髪を梳かしつけて長い髪を一つに結い上げ、簡単に身支度を整えると、昨日届いた荷物と自分のトートバッグを漁り始めた。 「……っくはぁーっ」  その顔は緩み切っていて、嬉しくてしょうがないようだ。にまにましながら昨日届いたばかりの紙を出し、材質を確かめる。ザラザラした面と少しツルツルした面がある。やはり、美月が知っている水彩紙の洋紙の一つに似ている。もう一枚、筒状に巻かれた状態の紙があるが、こちらはかなり丈夫そうな紙だ。しかも、紙の感触が先ほどのものよりも、より和紙に似ている。  ベッドの脇に置いてある水差しからコップに水を入れて持って来て、トートバッグに入っていた顔彩を取り出し、水で溶いて二枚の紙にそれぞれ垂らしてみると、片方は綺麗に色が沈むことも無く発色している。もう一方は、落とした傍からじわりと滲んでいく。恐らく滲みどめがされていない状態の紙だが、紙の目は細かくて綺麗だ。滲みどめをすれば、こちらは和紙の代わりに使えそうだ。  カタン、と窓の外から微かな音がして、美月は紙に目を落としていた視線を上げた。     
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