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「…優しさで言ってるんじゃない」
「じゃあなんなの?」
「…」
多田さんが言って、黒川さんが問い、多田さんが沈黙する。喧嘩をしている訳では無いのに、妙な圧迫感がある。
「…ふ、なんなんだろうな。自分でも分かんねえわ」
「お前…いつか女に刺されるぞ?優しさで心配してんならまだしも、無意識で優しくしてるとか。女はちょっと優しくされるだけでイチコロなんだよ。気をつけろ」
「そこは大丈夫。今女の子に興味ないし。かと言って男が好きって訳でもないしね」
「多田の場合バイセクシャルだからどっちもイケるだろ」
多田さんの性癖を知ってしまった…まあ、いいだろう。ていうか、さっきまで空気が冷たかったのに、すぐに和やかなムードになる。
多田さんと黒川さんならではだ。
「そういえば、今日濃厚なチーズケーキタルト新発売しますよね?」
「あ!そうだった!!昼になったらコンビニ行こう!」
…さっきまであんまり明るい話題じゃなかったのに…影月くんが空気を変え、黒川さんもそれにのる。
多田さんは優しそうに目を細め、そんな二人を見ていた。
多田さんは何を思っているのか…鈍感な僕には一切分からない。
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