命がけの出産

産まれた赤ちゃんには、皆から愛されるような心の美しい女性になってもらいたいという気持ちを込めて『愛美』と名付けた。

愛美は、素直で優しく、明るい女性に成長していった。

母親がいなくて寂しい思いもしたであろうに、僕の前ではそんなそぶりも見せなかった。

僕は愛美に、おかあさんの佳奈の話を時々していた。

佳奈は妊娠した時に病気になり、病気と闘いながら愛美を命がけで出産して天国に旅立ったこと、皆から愛される女性に育ってもらいたいと願っていたことを伝えた。

そんな佳奈の思いを愛美なりに理解してくれたようで、愛美は佳奈に感謝しているようだった。

愛美は大学まで進学して無事卒業後、会社に就職した。

それから数年後、愛美が２７歳になった時に、愛美から婚約者の男性の『翔太』君を紹介された。

僕は、少し寂しい気持ちもあったけれど、翔太君は愛美を託しても安心できる男らしい男性だった。

僕は翔太君に、

「愛美のことをよろしくお願いします。」

と言って、深々とお辞儀をした。

この僕の姿を見て愛美は少し涙を流しながら、

「おとうさん、ありがとう！」

とお礼を言ってくれた。

結婚式は教会で執り行われ、愛美と腕を組みながらバージンロードを歩いた。

僕は笑顔で、愛美を翔太君に託した。

結婚披露宴では、愛美のお礼の挨拶があり、愛美は僕だけでなく母親の佳奈に対する感謝の言葉もスピーチしていて、僕は佳奈もきっと天国で聞いてくれているだろうと思っていた。

結婚式と結婚披露宴は、盛大に執り行われて、翔太君と愛美は無事新婚旅行に旅立った。