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お通夜の夜、葬儀場に宿泊する僕は佳奈の遺体の隣に布団を敷いて眠ることにしたが、なかなか寝付けなくて棺の中の佳奈の顔をじっと見つめていた。
その時、急に辺りが暗くなったかと思うと、暗闇の中で棺の横に神と名乗る女の子がいることに気が付いた。
僕が驚いていると、その女の子の隣で霧のように白い煙が沸き起こったかと思うと、そこから佳奈の姿が現れた。
「ひろ、赤ちゃん無事産まれたのね!」
僕は、佳奈に謝らなければという気持ちでいっぱいだった。
「佳奈、本当にごめん!」
佳奈は微笑みながら優しく僕に話しかけてくれた。
「ひろ、私はひろとの間にできた赤ちゃんをどうしても産みたかった。
だから、ひろの選択に間違いはないよ!
ひろ、これから子育て大変だと思うけれど、よろしくお願いしますね!」
僕は、涙が溢れて言葉が出なかった。
「そういえば、名前まだ決めてなかったね!
ひろの気持ちがこもった名前を付けてあげてね!」
僕は涙をこらえて、やっとの思いで佳奈に言葉をかけた。
「名前には、皆から愛されるような女の子になるように『愛』という字を入れるね!
産まれた赤ちゃんは、佳奈の分まで大切に育てていくよ!」
その言葉を聞いた佳奈は、微笑みながら神と名乗る女の子と一緒に、霧のようになって消えていった。
僕は、佳奈に正直に謝ることができたからか、心の重荷から少し解放されたように感じた。
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