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第二章「双翼鱗虫と回り虫」
翌日、マユは久し振りに王都を出た。
前日に話した兵士は悪魔の幼虫の増加を懸念していたが、マユの見るところでは昔より少なくなっている……というよりは、全然いない。
近衛兵達が精力的に駆除した成果だろうか。
以前に王都を出た時は、これだけの距離を歩けば十匹くらいは目にし、自分でも対処できそうな小さいものは神の教えに従ってぷちぷちと踏み潰したりしたものである。
バタバタバタ、という音に頭上を見上げると、回り虫がその特徴的な飛び方で真っ直ぐに東へと向かって行くところだった。と、その時、近くの茂みから何かが飛び出し、回り虫へと迫った。それが双翼鱗虫なのに気がつき、マユは慌てて岩陰へと身を隠した。
双翼鱗虫は全長が人間の肩から指先までと同じくらいで、大きさで言えば回り虫より少し大きい程度である。しかし他の動物を攻撃したりはしない回り虫とは違い、非常に気性が荒い。
草食性なので他の動物を捕食するわけではないのだが、縄張り意識が異様に強く、特に営巣中に巣に接近するものに対しては、それが自分より大きな相手であっても容赦無く攻撃を加える。
体格差があるため人間が殺されるようなことは普通無いが、それでも見つかれば負傷は必至だった。
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