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「私、何かおかしなこと言った?」
「いや、そうじゃない。ただ……私はここの見張りを十年しているのだが、ここ二、三年は町に辿り着く子を見る機会がぐっと減ったような気がするんだ。……いや、すまない。卵送りをしたばかりの君にする話ではなかったな」
「そうなの……? でも、町はこの二年でますます賑やかになったような気もするけど」
マユは訝しく思った。
たどり着く子がそんなに少ないならば、地下都市の人口がこれほどまでに増えているはずはない。
「言われてみれば、そうだな。となると、単に私が見張りをしている日には来ていないというだけの話か。ちょっと神経質になっていたのかもしれないな。何しろここ数年は、近衛兵が“悪魔の幼虫”の駆除に出かける回数も増えていたものだから」
“悪魔の幼虫”の駆除は、神により定められたもう一つの義務だ。
“悪魔の幼虫”は地上で度々見られる芋虫であり、小さいものは手の平に乗るくらいだが、大きいものは人間とそう変わらないサイズになる。雑食性で基本的に何でも食べるものの、幼虫の時点では人間にとって特に危険な存在ではない。
しかし神によれば、この虫は成長するととんでもない悪魔になるとのことで、時折、王自らが兵を率いて探索に出ている。見つかったのが幼虫であれば兵の手により駆除されるのだが、十分に成長して蛹となったものである場合は、すぐにその場を離れて神に報告する決まりだ。
万が一、成体の悪魔が羽化するところに居合わせてしまうと、人間の兵士では出てきた悪魔にとり憑かれてしまい、かえって危険だからということらしい。
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