第一章「神と卵と悪魔の幼虫」

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「そんなに悪魔の幼虫は増えているの?」 「私は地上での探索任務にはついていないから、幼虫の数自体が実際に増えているのか、それとも単に陛下が以前よりも心配性になっただけなのかは知らないがね」 「王様がどうかは知らないけど、私は今の話を聞いてすごく心配になってきたわ」 「さっき送った卵達が?」 「それももちろんそうだけど、明日は東の町まで種を受け取りに行かないといけないの」  王国には、マユ達が住んでいるこの王都も含めて複数の地下都市がある。しかしそれらは全て天然の洞穴を利用したものであり、今のマユ達には自力でそれだけの地下空洞を作るような技術は無い。  同様に、地下都市同士を結ぶ地下通路を作ることも現在の技術では不可能であり、したがって都市間の移動には、悪魔の幼虫が生息する地上を通ることになる。幼虫自体は無害なのだが、幼虫が増えているとなれば、当然のことながら成体の悪魔も増えているということになる。  マユは成体の悪魔を見たことはないし、見たという人に会ったこともない。しかし地上を移動すると、ところどころで悪魔に滅ぼされたというかつての町の跡を見かけることがある。人間の力では到底不可能な破壊されようで、悪魔の力の恐ろしさに身震いさせられる。  成体の悪魔を見た者がいないのは、出会った人間は尽く殺されるか廃人にされるからだと聞くが、あの凄まじい破壊の痕跡を目の当たりにすると、その話も頷ける。  現在のマユ達の町が地下に作られるのも、悪魔による攻撃を避けるためだ。
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