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はじまりの雨
しばらく振り向かずにいる僕の、背中を叩いたのは看護師だ。
「旦那さん!!産まれます!!行きましょう!!」
振り返ると、父は顔の前で両手を合わせている。
「──はい!!」
僕はそれを横目に、看護師の後ろに続いた。
イカ焼きは、ソファに置いてきた。もう、しみてしまう心配をしている余裕などない。
分娩室に入ると、ちょうど、赤ちゃんの全身が出たところだった。
僕は妻の手を握った。
妻が優しい顔で微笑み、少し不安そうに、赤ちゃんを目で追った。
その時、真っ白なタオルで包まれた、僕たちの赤ちゃんは大きな産声を上げた。
ホッとした瞬間だ。
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ」
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