14人が本棚に入れています
本棚に追加
祖母がいつも、内緒のように祝ってくれる僕の誕生日は、男手ひとつで育ててくれた父の帰宅時間までに終了する。
その事を今思うと、父も内緒のそれを知っていたのだと思う。
僕の誕生日、いつも父の帰宅は遅かった。
「すまんなぁ。残業やったわ」
「うん、いいよ」
「もう、十歳になるか?」
「十一歳だよ」
「そうか、もうそんなか」
そんな会話は多少あったが、おめでとうという言葉はなかった。
しかし、僕もそれでよかった。
無理に祝われることの方が、心苦しいからだ。
最初のコメントを投稿しよう!