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母が亡くなった日だと知ってからは、祖母におめでとうを言われるのさえ、罪悪感を感じた。
一体、何がめでたいんだ。
誕生日を祝うという文化を無くしてほしい。
そんな事さえ思ったけれど、柔らかく微笑む祖母の嬉しそうな好意に、僕は幼いながら、全力で気づかいを発揮した。
別に欲しくなかったゲームだって、のめり込むようにやったし、祖母が作ったケーキだって、万歳をして喜んで、ご飯を食べ終わるまで待ちきれないと何度も言った。
小学生の僕だ。
本当は、案外クールだったんだ。
ケーキを待ちきれない程ワガママじゃなかったし、ゲームにのめり込む程、ゲーム好きでもなかった。
だけど、祖母に喜んで欲しかった。
僕は、祝われる誕生日を、無邪気な孫でいる日とする事で、どこか重たい気持ちを軽くしたかったように思う。
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