不思議な同居人 の巻

3/5
前へ
/41ページ
次へ
仕方なく、僕は眼鏡を貸してあげた。 僕も視力は同じくらい悪い。 そしてタエが、眼鏡をかけた途端「あんた誰?」と聞いてきた。 それはこっちのセリフだろ! そしてタエの身の上を知る事となった。 彼女は二十年ほど前に、病気で亡くなったそうだ。 お世話をしていた、名家の一人息子の行く末が心配で、成仏出来ないでいると言う。 「せめて、あなたのお世話をさせて頂くと、言う事でどうでしょうか?」とタエが提案してきた。 「いやいや、間に合ってますので」と丁重に断った。 「わたくし、尽くすタイプですから」タエはそう言って、冷蔵庫から野菜を取り出し、包丁でさばき始めた。 「ちょ、ちょっと!とにかく寝かせて下さいよ。明日は早いんで」とやっと眠くなりかけた。 「坊っちゃまはお休み下さい。炊事、洗濯、お掃除は、このタエにお任せ下さい」とタエは、ポンと胸を叩いた。 「うーん。じゃあ朝食楽しみにしてます」と面倒臭くなって来たので、もう先に寝ることにした。 そして翌朝。 目が覚めて、台所を覗くと「何じゃあ?」 まな板の上に、大根が切りっぱなしになっていた。 床には、卵が割れて落ちている。 洗濯機を覗くと、洗いっぱなしで干してない。 掃除機は玄関に、無惨にも転がっていた。 「ちょっと!タエさーん!」返事がない。 幽霊だけに、夜しか活動出来ないのだ。 家政婦、大丈夫なのか? 結局、僕が後片付けを全てやり、そして会社に遅刻した。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加