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仕方なく、僕は眼鏡を貸してあげた。
僕も視力は同じくらい悪い。
そしてタエが、眼鏡をかけた途端「あんた誰?」と聞いてきた。
それはこっちのセリフだろ!
そしてタエの身の上を知る事となった。
彼女は二十年ほど前に、病気で亡くなったそうだ。
お世話をしていた、名家の一人息子の行く末が心配で、成仏出来ないでいると言う。
「せめて、あなたのお世話をさせて頂くと、言う事でどうでしょうか?」とタエが提案してきた。
「いやいや、間に合ってますので」と丁重に断った。
「わたくし、尽くすタイプですから」タエはそう言って、冷蔵庫から野菜を取り出し、包丁でさばき始めた。
「ちょ、ちょっと!とにかく寝かせて下さいよ。明日は早いんで」とやっと眠くなりかけた。
「坊っちゃまはお休み下さい。炊事、洗濯、お掃除は、このタエにお任せ下さい」とタエは、ポンと胸を叩いた。
「うーん。じゃあ朝食楽しみにしてます」と面倒臭くなって来たので、もう先に寝ることにした。
そして翌朝。
目が覚めて、台所を覗くと「何じゃあ?」
まな板の上に、大根が切りっぱなしになっていた。
床には、卵が割れて落ちている。
洗濯機を覗くと、洗いっぱなしで干してない。
掃除機は玄関に、無惨にも転がっていた。
「ちょっと!タエさーん!」返事がない。
幽霊だけに、夜しか活動出来ないのだ。
家政婦、大丈夫なのか?
結局、僕が後片付けを全てやり、そして会社に遅刻した。
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