白狐 の巻

1/2
前へ
/41ページ
次へ

白狐 の巻

夜の神社は、何処となく薄気味悪いものだ。 特にここ、稲荷神社は、古くから建てられたものらしく、木柱にも所々にカビが生えている。 直樹は、境内に備えてある賽銭箱に、小銭を投げ込んだ。 シャンシャン。 鈴を鳴らして手を合わせる。 「どうか幸子と、上手く行きますように」 明日は同僚の幸子に、告白するつもりで神頼みに来たのだ。 すると後ろで「ケタケタケタッ」と笑う声が聞こえた。 「何だ?」後ろを振り返ったが、誰もいない。 首を傾げながら、本堂に向き直った途端、 「ケタケタケタッ」と、また聞こえた。 直樹は、勢いよく振り向いた。 すると目の前には、目を真っ赤にした白い狐が笑っていた。 それは直樹の、背丈以上に大きかった。 「うわあっ!」直樹は驚き、その場で気を失ってしまった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加