白狐 の巻

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僕は新居の整理をしていた。 新居といっても、安アパートで年季が入っている。 「前の部屋の方が、落ち着きますね」とタエは饅頭を食べながら、お茶を飲んでいた。 「誰のおかげで引っ越したと思ってるんだよ!」 しかも、何をくつろいでいるんだ。 僕は、前のアパートで火事を起こし、追い出されたのだ。 タエは家政婦の幽霊で、あれから何故だか僕に付きまとっている。 「さあ、もう寝るかな」 すると「坊っちゃま。明日もお仕事、頑張って下さいませ」とタエのそんな所は、しおらしいのだが。 「明日は日曜日なんで、仕事は休みなんだ。それで学生時代の友人が、引っ越し祝いに来てくれるって。まあ、新しい恋人が出来たから、多分見せびらかしたいんだよ、きっと」 友人の直樹は、高校からの付き合いで、かれこれ十年になる。 久し振りなんで、会うのが楽しみだ。 「では、料理の支度はわたくしが」とタエが袖をまくったので「いやいいよ。大丈夫だから。明日はタエさんもゆっくり休みなよ」 タエは家政婦のくせに、家事は全く駄目ときてる。 前の主人は、よく使ったと褒めてやりたいくらいだ。 そして翌日、直樹がうちにやって来た。
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