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「直樹、わざわざありがとな」僕は玄関で、直樹を迎えた。
「こんな時しか会えないもんな。そうだ、彼女を紹介するよ」と直樹が外に手招きすると、玄関の横からひょこっと彼女が顔を覗かせた。
「こんにちは」目がくりっとしていて、可愛らしい子だった。
「沢木 幸子さん。会社の同僚なんだ」直樹は照れ臭そうに、紹介した。
「私まで押しかけてすみません」幸子は頭を下げた。
「とんでもない!大歓迎ですよ。さ、上がって」
僕は、昼間の内に買い出しに行って、食材を買い込んでいた。
そして鍋を囲んで、寿司に唐揚げなど、テーブルにいっぱい並べた。
「すげー!なんか気を使わせたかな?」直樹が恐縮して言った。
「遠慮すんなよ。さ、飲もうぜ」そして僕は、一升瓶をドンッと置いた。
そして三人は、昔話で大いに盛り上がった。
直樹は、いなり寿司に手を伸ばした。
「なんだよ直樹。さっきから稲荷ばかり食べてるじゃん。肉も食べろよ。幸子さんを見てみろ」
幸子は、美味しそうに肉を頬張っている。
「やっぱりいなり寿司は美味しいよな。そうだ。稲荷で思い出したんだけど」と直樹は先日、稲荷神社で体験した狐の話をした。
「えー本当かよ?酔ってたんじゃないのか?」と僕は笑った。
すると直樹は「本当だって!まあ、あの願掛けで、幸子と上手く行ったんだけどね」とデレデレしながら、また稲荷に手を伸ばした。
すると突然、稲荷に箸を突き立てたまま、直樹は動かなくなった。
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