11/12
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
思ったより早く退院できたものの、 何より切った傷の方が治りが遅かった。 いつまでも傷口から何か染み出し、膿んだあと乾燥し、 瘡蓋(かさぶた)のようにパラパラと剥がれた。 ケガをした際に何か菌が入ったのかもしれないと言われたが、 いまのところ特に生活に支障がなかったため、放っておくしかなかった。 仕事に復帰するにはまだかかりそうだったが、 せめて挨拶くらい言っておくのが社会人としての常識だ。 彼は歩いて会社に向かった。 いつもの車庫は当然そのままあり、窓も開いていた。 今日は晴れている。 そこには人影もなかったし、このケガもきっと不注意だったのだ。 幽霊やお化けの類なんてありえない。 キキィィィィィーー!! 近くで突然、大型車の急ブレーキの音がした。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!