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思ったより早く退院できたものの、
何より切った傷の方が治りが遅かった。
いつまでも傷口から何か染み出し、膿んだあと乾燥し、
瘡蓋のようにパラパラと剥がれた。
ケガをした際に何か菌が入ったのかもしれないと言われたが、
いまのところ特に生活に支障がなかったため、放っておくしかなかった。
仕事に復帰するにはまだかかりそうだったが、
せめて挨拶くらい言っておくのが社会人としての常識だ。
彼は歩いて会社に向かった。
いつもの車庫は当然そのままあり、窓も開いていた。
今日は晴れている。
そこには人影もなかったし、このケガもきっと不注意だったのだ。
幽霊やお化けの類なんてありえない。
キキィィィィィーー!!
近くで突然、大型車の急ブレーキの音がした。
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