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同時に、怪我をした箇所が無性に痒くなった。
居ても立っても居られない痒みに、
手当てをしている上から掻きむしる。
今までこんなことなかったのに、怪我をした箇所全てが痒くて仕方ない。
包帯の上では飽き足らず、ほどいて直にその箇所を掻く。
解けていく包帯から出てきた腕や足は、
黒い瘡蓋のようなもので全身が覆われていた。
我慢ならない痒みを抑えられず爪を立てると、
あの日と同じ、血生臭い鉄の香りが漂い、触れた箇所から剥がれていく。
いや、剥がれるというより崩れ落ちている。
雨の日に声をかけてきた、あの女のように……。
次第に身体が軽くなっていくような感覚と、
それに反して足元に赤黒い土の塊が増え続け、
体積の3分の1くらいになりかけたとき、
額であったであろう箇所に、ひとしずくの雨つぶが当たった。
すでに人型というより黒土の山と化している彼に降り注いできた雨は、
まるで黒い血の涙を流しているようにみえた。
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