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『あの…』  「ハイ?」 『…見て…ましたよね?』  「何のことですか?」 声をかけてきたのは、そっちだ。 痴漢的な謂われをされるのはひどく心外だし、 訳のわからないことを言い出すこの女性に、急に腹立たしくなってきた。 ま、天気が悪いのも若干加味しているかもしれないが…。 『見つめてたじゃないですか!』 『私のこと、変な女だと思って、見てましたよね?!』 完全に言いがかりだ。 道を聞かれたから教えた。 驚いたからマジマジと見てしまったのかもしれないが、何がおかしいのだ。 確かに今現在は、変な女だとは思っている。 『あなたずっとわたしのこと、見て……』 その女は、いつの間にか私の腕をつかんでいる。 「なんなんですか!いい加減にしてください。オレ仕事なんで行きますね!」 半ば強引に、つかまれていた腕を振り払う。 すると、今まで力の入っていたその腕はいともたやすく外れ、 数メートル先にちぎれ飛んでいった。
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