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「うわぁあぁあぁぁぁぁ」
今度は驚き過ぎてしりもちをついた。その状態で後ずさる。
スーツ姿の女性は、片手に傘を持ち、
反対の腕を無くしたまま、
『やっぱりあなた、わたしのこと、見えてた人だわ』
それは、怒りや恨みからではなく、歓喜の声に聞こえた。
それはもはや黒いスーツ姿ではなく、
この雨にもかかわらず、土と血が混じった、
どす黒い色の塊を身体に纏っているような、おぞましい物体となっていた。
『わたしは、あそこに閉じ込められて死んだ』
『死してなお、あそこから出ることを禁じられた』
『出るには、わたしを認識する男性がいること』
『そして、雨の日であること』
『最後に、それが…』
女であったはずの物体は雨に打たれ、
その身体を地面から跳ね上がった雨と同化させ、
辺り一面に少しずつ広がってきていた。
雨足が強くなってくるにつれ、
血のような、鉄分を含んだ香りが辺りに漂ってくる。
「うわぁぁあぁぁ、なんで、何で、こんなことに…」
もう出勤どころか、言葉にもならない。
崩れゆく赤黒い物体から遠ざかるように少しづつ後ずさりしたとき、
何か濡れた紙のようなものが右手に触れた。
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