神の落日、フランケンシュタインの夜明け

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 この船はロス星を発ってからずっと人工知能の自動運転で操作されていた。二十一世紀の開発黎明期ならともかく現在は二十八世紀、技術的特異点を超えて久しい現代の人工知能が事故を起こすなどあり得ない。そもそもミスやエラーを起こさない正確無比な自動性こそが機械の特性なのだから。  ならばこの船の人工知能は欠陥品だったのだろうか?  いいや、それも否だろう。何故ならば既に製造の現場は何重にも自動化されており人の手や欠陥の入り込む余地などどこにもない。  つまり私は既に数世紀前に消滅したはずの交通事故という概念によって今まさに死のうとしているのだ。 「馬鹿な……」  噴き出した汗で額がぬめった。どうしよう、しかしなにが出来る。堂々巡りする思考に手が止まっているが今も尚、空気は流出し続けている。先ほどから鋼の砕ける異音が反響している船内の温度も低下し始めている。 「ああしまった。せめて、宇宙服だけでも着ておくべきだった……」  己の不明を恥じた。長らくおかれていた安全な状況に慣れて私は宇宙航海の基本的な規則をすっかりないがしろにしていたのだった。  だが時すでに遅く、すぐに私は意識を失った。そしておそらく速やかに息絶えるだろう。  嫌だ、嫌だ、嫌だ。  死にたくない。死にたくない。  闇に堕ちてゆく感覚の中、私はそれだけを希った。  何故だ。何故私だけがこんな目に遭わなければならない。     
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