神の落日、フランケンシュタインの夜明け

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 頬に当たる湿った感触に私は目を覚ました。どうやら私は土の地面に横たわっていたようだった。朝露で頬にへばりついた草を剥しながら起き上り私は辺りを見回した。  鬱蒼と茂る枝葉からそそぐ木漏れ日が柔らかく降り注ぐ。穏やかな風が木々の間を抜け私の髪を舐った。濡れた土特有の、しかし決して悪臭ではない匂いが地面から立ち上がっている。どうやら私は森林の中にいるようだった。 辺りに人影はない。一瞬、私の宇宙船はどこかの星の自然保護区に不時着したのかと思ったが、しかし周囲にそれらしい痕跡もない。大体、私が生身で放りだされたとは五体満足なこの状況からは考えづらい。 「おーい」  呼びかけてみたが応えはない。再び見回してみると人影はない。小鳥のさえずりすらなく、耳を澄ましても風に揺れる葉の音が届くだけだった。  完全に孤立している。此処が何処かもわからない。しかし不思議な事に私の心に恐れは無かった。  先ほどはあんなにも胸の中を掻き毟っていたような不条理への怒りも霧散し、今ではむしろ穏やかで暖かな安心感で満ち満ちている。     
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