神の落日、フランケンシュタインの夜明け

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 幼子に言い聞かせる様なその口調が気に障り、私の口調が微かに鋭利を帯びた。 「それで、此処は一体どこなのですか?それに……」  思わず首を振った。 「それに私の宇宙船がどこかご存知ありませんか?地球に行かなければいけないんですよ。ここに墜落したのだとしても修理すればまだ乗れるかも、ああ、いや、そうだ。貴方の船を貸していただけませんか。お礼は必ずさせていただきますから。大体、太陽系にこんな惑星がありましたっけ。それともここはコロニーの一種ですか。座標データもどうか貸して……」  私が一気にまくしてているのを老人は遮るように首を振った。 「すまないが、私はお主の力にはなれぬよ」  えっ、と私が小さく聞き返すと彼は続けた。 「忸怩たるものはもちろんあるのだが、もう私にはそんな力はないのだよ。分かるだろう。私は老いた。老いさばらえたのだ……」 「だったら」  老いた。だから衰えた。そんな奇妙な論調を並べる老人に私は怪訝に眉を顰めた。 「だったら、再生手術を受ければいいじゃないですか。デジタル化した意識データをクローニングした新しい体に移し替えればいい」  クオリアの解明など一世紀以上前に済んでいる。つまり人類はとうの昔に永遠をその手に陥れているのだ。     
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