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開運グッズ 叩かれ様
身長152センチ、体重七十キロ(ちょっとサバ読み)、ぶちゃっけデブスな私だけど、振らないバットにボールは当たらない。私は恋の格言にハートを奮い立たせると、カウンターの向こうでコーヒーを入れる店員を見つめた。名札を見つめ声を掛ける。
「……あの奥村くん。今度、私とデートしない?」
黒いベストに黒いエプロン、お洒落なカフェのユニフォームに身を包んだ奥村くんは素敵な笑顔を見せるとこう言った。
「すみません。お店のルールでお客様とお付き合いすることは禁止されているんですよ」
私は爽やかに振られた。
「あはっ……、迷惑かけてごめんね」
作り笑顔を見せると伝票を手に取り会計のためレジに向かった。背後から奥村くんと女性店員の会話が聞こえてきた。
「奥村さん、マニュアルトークがお上手ですね」
「駄目だよ。お客さんに聞こえるから」
直感でわかる。こいつらわざと聞こえるように言ってる。二度と来るなの意思表示だ。私は聞こえないふりをしながら店を出た。最悪。不幸は続く。傘立てにさしていた傘が盗まれていた。表通りには今の気分を現すような土砂降りの雨が降っていた。私には振り向いて奥村くんに傘を借りる勇気なんてなかった。
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