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何も恐れることはない。私は爽やかに微笑み返した。真島は困った様子でそっぽをむいた。
「お前もやられたらやり返せよ」
真島は苛められっ子の佐藤にそう言うと自分の席に座ってしまった。私は勇敢な真島に恋をした。世間はゴリマッチョの彼を筋肉バカと呼ぶかもしれない。だけれど私は正義感の強い人間が好きだ。彼の愚かさはきっと私の青春を楽しいものへと変えてくれるはずだ。
私は五時限目の授業が始まると小テストの裏にラブレターを書いた。内容はいたってシンプルだった。『あなたの正義感に惚れました。私と付き合ってください。牧瀬梨絵』。
私は出来上がった手紙を折りたたむと、板書をする現国の先生の目を盗んで、友達づたいに真島へ届けてもらった。真島はぶっきらぼうに手紙を読むと額に汗を浮かべながらこっちを見てききた。私はウィンク混じりにピースサインを作って見せた。
放課後、私は学校の非常階段に呼び出された。真島は照れながら尖った唇で私をふった。
「悪いけど、俺、今はサッカーに集中したいんだ。こういうからかいはやめてくれないか」
短髪の大男はご丁寧に私のラブレターを突き返してきた。
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