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「でも漫画なんかじゃ監督なんていなくても、イケメンエースがチームを引っ張って簡単に全国大会に出られるわけじゃない?」
「漫画と現実は違うよ。サッカーには残酷なカーストがあって、自信のある選手は皆、プロチームのユースにいっちゃうし、そこに落ちた選手は全国大会の目指せる有名高校にいっちゃうから、普通の県立高校にはあまりいい選手は集まらないんだよ」
「じゃぁ何のためにウチのサッカー部は練習をやっているの?」
「さぁ、適当に流して、女の子にモテたらラッキーって思っているんじゃない?」
「いやに強気ね」
「そ、そういう意味じゃないけど……」
佐藤はしどろもどろになると手元の美少女漫画に目を落としてしまった。ふん。苛めるつもりはないのにすぐイジイジする。恐らく南郷サッカー部は実力もさる事ながら、家が裕福ではない部員が多いのだろう。かくいう私も親に県立以外はダメと言われ、ここの学校にきた口だ。名門への夢破れ弱小に流れ着いた者がやる気を出すのは普通は難しい。
私はトレードマークのピンク色の眼鏡のフレームをさわると、図書室のベランダに出た。
なにやらグランドの雲行きが怪しい。
三年生と思しきサッカー部員と真島が口論をしていた。
「先輩、もっと練習しましょうよ」
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