頑張ってるね

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「うるせぇな、お前、なに格好つけているんだよ。キツイ練習したけりゃ、始めから私学に行けばいいだろ。うちは弱小なんだよ。適当に体がなまらければそれでいんだ。お前ら、帰るぞ!」  三年生は偉そうに言うと全員を引き連れゾロゾロと校舎の影に消えてしまった。これが真島が教室でイラついていた理由か。やる気のない三年生に付き合わされれば、そりゃぁモチベーションが下がるのもわかる。  やっぱり真島は馬鹿だ。皆と一緒に帰ればいいのに一人だけでグランドを走り始めた。三年生と二年生に板挟みになって困ってしまったのか、数人の一年生が少し遅れて、真島の後を走り始めた。真島のやつ、全くの部内孤立ってわけじゃないんだ。  だが世のなかにはガチクズがいるのだろう。一度、校舎に消えた三年生がグランドに帰ってきた。また偉そうに大声で怒鳴り始める。 「一年、あがれよ。倉庫の鍵、閉めねぇとこっちが帰れねぇんだよ!」  萎縮した一年生が足を止めてしまった。真島は一人で走り続ける。三年生は執拗に叫んだ。 「真島、お前も上がれよ! 舐めてんのか!」 「鍵は自分で返して起きます。そこに置いておいて下さい!」  おぉ。不当な暴力には怯まない。真島は三年生に言い返すと黙々とグランドを走り続けた。損な性格だ。だけどそこが真島のいいところなのだ。実に微笑ましい。     
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