頑張ってるね

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 大男が声を絞り出す姿は格好悪かった。だけど私だってリーダーシップなんてとったことがない。強気と弱気どっちが仲間の心に響くかなんてわからない。だけど少しでも真島の役に立ちたいと思った。  私は試合帰りに商店街にある小さな本屋に入った。最初に手に取ったのはお弁当の本だった。朝練を始めるなら真島もお腹が減るだろう。食べ物の差し入れはきっと喜んでくれるはずだ。「違う、違う」  私は首を振ると本を棚のなかに差し込んだ。真島はチームを強くしたいんだ。私が恋愛ごっこをしたところで南郷は強くなるわけじゃない。南郷を強くするためにはどうすればいいのだろう? 「あっ」  私は閃いたとばかりに、スポーツの実用書のコーナーに向かった。当たり前のことだ。チームに監督がいないのならば、サッカーの指導書を読んで、それをグランドで実践すればいいだけだ。私は眼鏡の弦に手を掛けると慎重に本を選んだ。  一冊を手に取り目を通す。素敵な言葉が目にとまった。まさか私は指導書に恋をするなんて思っていなかった。中途半端な恋愛小説よりも気の利いたことが書いてある。私は食い入るように文字を目で追うとその本を買うことに決めた。  私は一晩を掛けて、サッカーコーチングマニュアルと書かれた本を全部読んだ。ちんぷんかんぷんと思わせるところもなかったわけじゃないけど半分以上はわかったつもりだ。     
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