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頑張ってるね
「へいへい、パンチ、パ~ンチ!」
クラスで一番大人しい佐藤が苛めっ子の標的になっていた。軽いジャブを何度も何度も繰り返し、佐藤の肩口にあてて喜んでいる。イジリという名のくだらないイジメ。佐藤のほうもへらへら笑いながら、嵐が過ぎ去るのを待っていた。
私は読んでいた本を閉じると窓の外を眺めた。何でこんな学校に来てしまったのだろう。全然、学校が楽しくない。もう少し勉強してレベルの高い学校に行けば良かった。高校二年生の春にもなって、私は始めて時間の無駄使いに気づいてしまった。
バシン! 肩をすくめるほどの大きな音が聞こえた。私は後ろを振り返る。
「くだらねぇことやってんじゃねぇよ。俺が相手をしてやろうか?」
苛めっ子の頭をサッカー雑誌で殴ったのは、クラスで一番大柄な生徒、真島聖治だった。
「そんなんじゃねぇよ……」
不良にもなりきれない苛めっ子は、小物感丸出しのセリフをはくと自分の席へと帰っていった。真島は腹に何か溜めているのか苛々している様子だった。真島は私と目が合うと偉ぶっててこう言った。
「なに見ているんだよ?」
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