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あの人は死んだのだから・・・。立ち止まったままの一つの葦(あし)が、風に揺れている。忘れ去られたように、立ち止まっている・・・。
季節は流れ続ける。その葦を置いて・・・。
どうして?と、囁く・・・。
あの人の面影は擦れて(かすれて)ゆく。それでも心は変わらない。声も、姿も、忘れても、想い出だけが、一人ぼっちの葦を生かす。
あの人は死んだのだから 確かに死んだのだから 死んだのだから・・・。
あなたを置いて 逝ってしまったのだから・・・。
一人ぼっちの稲穂が、風に揺れている。
雨が降る 雨が降る。
つめたい つめたい 雨が降る。
葦は、一人ぼっちで萎れ(しおれ)てしまった。
・・・風が吹く。
あの人は死んだのだから・・・。
鳥が囀る(さえずる)。
確かに死んでしまったのだから・・・。
どうして?と呟く。
雨が降る 雨が降る。
つめたい つめたい 雨が降る。
風が優しく穂を撫ぜる。
あの人は、風になったのだ。
鳥の声が、空に舞う。
あの人は鳥になったのだ。
冷たい雨は 私を濡らす。
鳥が囀る ごめんね と言っているみたいだ。
風が吹く 優しく 頬を撫ぜる・・・。
どうして?と叫び、泣いた・・・。
雨が降る 雨が降る 優しい優しい 涙の雨が・・・。
一人ぼっちの稲穂は 一人ではなかったことを 思い出す。
穂は歩く 雨に濡れて 風に揺られて 鳥の声を聞きながら・・・。
人は歩く・・・長い長い坂道を・・・貴方の想い出を、隣に・・・感じながら・・・。
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