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血の匂いと吐瀉物の匂いが入れ混じる教室は、いつの間にか殺風景になっており将吾以外に誰もいなくなっていた。
将吾は事態の異常さに気付きながらも呑気に窓から逃げ惑う生徒の姿を眺めながら考える。
おそらく校内放送で伝えられたことは本当だろう。智也の突然死が毒によるものなら、あの異常な死に方は納得できる。そして智也の他にも7人が犠牲になったとすれば、この教室外からも悲鳴が聞こえたのは恐らく智也と同じように毒によって死んでいったのだろう。
奴の言っていることが本当であればここから逃げても意味がない。恐らくこの学校の全生徒はコンピューターか何かで特定され逃さないようにしているのかもしれない。
「なんて考えは、俺がミステリー小説ばかりを読んでいるからか…現実にはあり得るはずがない」
将吾は皮肉を浮かべた顔で一人で笑う。いつの間にか彼の恐怖心は消え、受験生という億劫さが消え、肩の荷が下りたような感じと、事態の異常さに恐怖が一周回って興味へと変わっている。
将吾はこれから起きるだろう惨劇にわずかながら期待を浮かべていた。
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