第1章 校内放送

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 将吾は教室の一番端の席で、手持ち無沙汰を紛らわした読書最中に、受験に対する皮肉を考えていた。  初々しい新クラスでは、多くの生徒が受験についてをトピックに会話しており、各々のグループが将吾と同じように皮肉を言い合っている。しかし中には必死に机に向かって分厚い英単語を覚えている生徒もいて、感心の意に値する生徒もいた。 「矢次遅くね?」  突然霧島徹が受験生という話題に針を差し込んだ。そろそろその話題に嫌気が回ったのだろう、彼以外も同感だったのか話題は突如授業開始十分を過ぎても来ない矢次先生にへと移った。 「あいついっつもウゼーくれーくるのはえーのにな」  やけに言葉を伸ばす癖があるのか、ヤンキー口調に憧れているのか工藤大輔が気だるそうに答える。 「それな。てか、あいつこの前旦那と別れたの知ってた?」  金髪で化粧をゴリゴリにした水川成美が思いもよらないことを口に出すと、急にクラスは成美に集中した。しかしあからさまに成美の方を向けばしかめっ面され、下手をすれば何か言われる可能性があることからクラスの大半は彼女に向き気もせず耳だけを向けていた。 「マジで?なんで?」  興味ありげに尋ねたのは荒瀬智也だ。背が高く体ががっつりしていて、ワイルドなその顔立ちから女の子からの告白は日常茶飯事である。そして彼はその告白に対して全てイエスと答え、やることをやってからすぐに別れていた。
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