田中裕二について

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「はーい、じゃあ、アイからいっきまーす!」 アイは机の上に顔を乗せながら、紙を顔の前に置き、読み上げていく。 「田中裕二は、自殺当時は独身だねー。高校生の時には、一人の同い年の女の子と付き合ってたけど、受験勉強に入ると、お互いすれ違いでお別れ」 アイは紙の端を破り、手のひらに乗せて、小さく息を吹きかける。 すると、小さな紙は五つに分かれ、人型へと変わり、アイの手のひらで動く。 「大学生になると、サークルに入って、女の子にもてはやされるけど、付き合った子とは三ヶ月以上は続かず。友人とも、飲み会だけであまり良い関係は築けていない感じ?」 「就職後は?」 マナブの質問に、アイは「え?っと?」と、人型の紙をテーブルの上に乗せて動かす。 「就職後は、有名商社に入社。けど、職場内では自分よりもスペックの高い男ばかりで、女性社員からは微妙な評価しかもらえてないねー」 「やっぱ男って顔かな??」なんて、ニヤニヤしながらアイは言う。 そんなアイの目の前に座るカネコが、「あら、そうかしら?」とメガネをクイっとあげる。
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