田中裕二について

6/8
前へ
/11ページ
次へ
「ゲンキの報告がまだでしょう。審議をするのは、早いのでは?」 カネコの冷静な言葉に、マナブもシキも黙る。 「ゲンキ、どうぞ」とカネコがそう言うと、ゲンキは「ほいよ」とニカッと笑った。 「彼の健康状態は、良好だ。学生時代、勉強に専念していたからか、視力は落ちているが、それ以外は問題がない。ただ」 「ただー?」 「自殺をした日、彼は高熱だった」 全員の視線がゲンキに集まる。 「39度を超える高熱の中、会社に行くまで目眩もあったみたいだ」 「……マナブ、そいつの死んだ時の状況は?」 シキの質問にマナブは、冷静に答える。 「ホームの黄色い線の内側に立っていたが、人とぶつかり、その勢いで線路に飛び込んだ」 「……目撃者はなし。自殺と考えられてもしょうがないわね」 「ってことはー、たまたまぶつかられて、熱で目眩によって、線路に落ちちゃった、っていう事故?」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加