1 ディセルマリーは邂逅を望む

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 「まぁ一応そうだと肯定」  先刻の質問を一つ流されたのと同様に、スルーされるか濁らされるか否定されるかの、いずれかだろうと踏んでいた彼の予想は裏切られた。  「ほ、本当に? 凄いな。初めて会ったよ」  この大陸で”血族”と言えば、彼が生まれた頃に滅ぼされた小国の王族の血縁者を示す。世界でも唯一の、紫の髪と瞳を特徴にした一族であった。国は滅びたものの、近隣の村落に逃げおおせた血族が数名いたとしても、有り得ない事ではない。  「それじゃ君も魔術が使えるのかい?」  血族の特徴は髪と瞳だけではなく、魔術を扱う事が出来るという点が挙げられる。   「いいや使えないよと否定」  今度は流石に嘘かも知れないな、と彼は思った。魔術が強力過ぎたが故に、血族が治めていた国は攻められたのだと、彼は歴史の授業で学んでいる。血族は見付け次第殺せ、等というお触れが出ているわけでもないが、わざわざ他人に明らかにするメリットも無いだろう。嘘ではなく、本当にマリーにはそんな力は無いのかも知れない。そもそも、血族が魔術を扱えた、というのも今となっては伝説でしか無く、国を一つ滅ぼすだけの理由を、強引に付けて広めただけの可能性もあった。    
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